少し復活してきたので、久しぶりに長文です。
私の長年のモヤモヤを代弁して下さっているかのような記事に出会ったので、紹介させて下さい。
精神疾患＝「心の病」なの？
「精神科」という呼び方は適切なの？
このような疑問や違和感を感じていらっしゃる方は、意外と多いのではないでしょうか。歴史的な背景や、現役精神科医との意見交換を踏まえて書かれた、小柏さんの記事を是非お読み下さい。
ここでは「精神科」という名称について考えてみたいと思います。
（※この記事は、あくまで私の意見をまとめたものです。偏った面もあると思いますが、一つの問題提起として受け取って頂けると幸いです。）
「精神科」に代わる新しい名称を！
きっかけは何であれ、精神疾患は脳内物質の分泌の異常から起きるものだと、私は考えています。長い間「精神科」という言葉には違和感を感じていましたし、小柏さんの
「精神科」という名称を『脳内科（あるいは）脳内ホルモン科』に変えよう！
という意見を目にした時は、心の中で拍手喝采してしまいました。
もちろん、精神科で行われているのは、脳内物質に直接アプローチする薬物療法だけではありません。しかしその他の精神療法は、薬物療法と同時に行うことで、最大の効果を発揮するものだと考えています。薬物療法と精神療法は、いわば両輪の関係にあるわけです。
そうすると『脳内科 / 脳内ホルモン科』という名称が、投薬一辺倒の風潮に拍車をかけるのでは？という、精神科医の方のご意見もごもっともなのですが……（詳しくは小柏さんの記事をご覧下さい）。でもやっぱり「精神科」はちょっと違う気がする……。
そもそも精神って何？
人によってイメージするものは違うと思いますが、私にとって「精神」とは人間性の核になるもの、英語だと spirit や soul に当たるものです。
これを治すなんて、失礼な話ですよ。だって、
精神に「正しい」も「間違ってる」もない。
精神科の患者は、人格を否定されているようなもの。
これは言葉狩りではないと思う。
精神医学と二元論
例えば英語では、「精神：spirit / soul」と「精神科 / 精神医学：psychiatry」は区別されているようです。精神医学を輸入した時に、翻訳がちょっと雑だったのかも知れません。
余談ですが、「精神医学：psychiatry」という言葉について調べると、面白いことに気付きます。語源は古代ギリシア語の「psykhē：プシュケー / 魂」と「hiratos：治療者」だそうです。プシュケーとは、少し乱暴に言ってしまえば、肉体の対義語です。
「精神医学」という概念自体が、「精神」と「肉体」という、西洋文化圏お得意の二元論から生まれたものだということが、語源を辿るだけでも分かります。精神医学のベースにある「正常（正気）」と「異常（狂気）」という区別の仕方も、実に分かりやすい二元論です。
メンタルも大事。身体も大事。
さて、精神疾患の患者が苦しんでいるのは、肉体と切り離された、メンタルの症状だけでしょうか。メンタルの問題も、身体に表れた不調のことも、どちらも相談したい。精神科の扉を叩く人のほとんどは、そう思っているはずです。
そこで思い出すのが「心療内科」という言葉です。メンタルも身体も診てくれるイメージの「心療内科」ですが、精神科とは何が違うのでしょうか。
厚生労働省のHPによると、*1
精神科 ➡ 「うつ病」「統合失調症」「神経症性障害」などが対象
心療内科 ➡ 心理的な要因で身体の症状（胃潰瘍・気管支ぜんそくなど）が現れる、いわゆる「心身症」が対象
という定義になっているようです。しかし、境界はかなり曖昧です。
……じゃあさ、心療内科に統一しちゃえば良くない？
と思わなくもありませんが、恐らくそこは色々と事情があるのでしょう。患者ではなく、医療関係者の事情が。
考えることが力になる
実際のところ、「精神科」という名称を変えようとするならば、途方も無いパワーと時間が必要とされるに違いありません。しかし「精神科」に代わる名前を皆で考えることは、決して無駄ではないと思います。当事者もそうでない人も広く議論に加わることで、精神疾患への理解が深まるのではないでしょうか。
『脳内科 / 脳内ホルモン科』という小柏さんの案は、「精神疾患は心の持ち方次第で治せる！」という誤解が解ける、とても良い名称だと思います。
これ以上のものはなかなか思いつかないですね。メンタルと身体の両方を診るという意味を込めて『総合診療科』なんてどうかな？と思いましたが、もう実際に存在するのでした……。うーん、助けて、ドクターＧ！
皆様もいい名前が思いついたら、どうぞお知恵を貸して下さいませ。
