おちぃ様は我が家のオカメインコである。うちに来て7年になる。
生まれつき身体の弱いおちぃ様が、原因不明の病で視力を失ったのは、2年ほど前のことだ。ケージから出しても、かつてのように部屋中をブンブン飛び回ることはない。止まり木のついたスタンドに、ちょこんと乗っている。
以前より格段にちょっかいを出しやすくなったおちぃ様を、私と娘が放っておくはずがない。コミュニケーションの距離が近くなったのは嬉しい誤算であり、おちぃ様もまんざらでもない様子だ。顔をそっと近づけてインコ臭を吸引するのは、まさに至福の時間である。匂いは日によって微妙に違うが、ベースは亀田製菓のハッピーターンに極めて近いと思う。
ハッピーパウダーにまみれているのだから、当然と言えば当然だが、オカメインコは大変な痒がりである。首の後ろや頰をかいてやると、特に喜ぶ。ここをかけ、もっとかけと際限なく要求し、動物としてあるまじき無防備さで、快感に惚けている。こうして私たちは、甘美で濃密な時間を過ごす。
おちぃ様がつぶらな瞳で、最もよく見ていたもの。それは他でもない私だろう。もっと美しいものを沢山見せてやりたかったと思うといたたまれないが、せめて記憶の中の私は笑っているといいなと思う。失ったぶんだけ、幸せで満たしてあげられますように。
水槽の中で療養中のおちぃ様(2017年)