眠ることとは、小さく死ぬことである。
これは偉人の言葉ではない。私の父の言葉である。正確に言うと、サイエンス寄りのオカルトを好物とする父が、おそらくその類の本で仕入れたであろう言葉である。
宇宙にまつわる様々なエピソード、ピラミッド建設の謎、フェルマーの最終定理……等々、父がふるった熱弁の内容を、不出来な娘はほとんど忘れてしまった。しかし、何らかの文脈でたった一度だけ言ったこの言葉を、今でもたまに思い出す。
死も睡眠も意識のブラックアウトと定義するならば、「眠ることとは小さく死ぬこと」とは、うまく言ったものだなと思う。
日常的な死と再生の延長線上に、本物の「死」があるのなら、その先には「生」もあるような気がしてくる。ああそうか、これは輪廻転生とか、それ系の話の時だったかな。
この数日間よく死んだ私は、明日からきっとまたよく生きることができるはずだ。と思いたい。